男性オンリーの歌舞伎。
昼の部で『勧進帳』の義経を演じた人が、夜の部では『藤娘』を踊る……なんていうのもざら。
“立役”と“女形”と大きく分けられますが、それは「絶対」なものではありません。

しかし宝塚は、“男役”“娘役”が正式に決まっています。

決まってはいますが「ワタシは男役だけど、今回は女役をする」…はあります。
この場合は“娘役”と呼ぶより“女役”の方が合うでしょう。


男役が女性の役を演じる代表格は『ベルサイユのばら』のオスカル。オスカル様、男装の麗人ですもの。これはもう男役のもの。『紫子』の紫子も同パターン。

それから『風と共に去りぬ』のスカーレットも男役が演じることが多いですね。キリリとした女性像が男役に合うのでしょう。

異例なところでは『エリザベート』のエリザベートを、元月組トップスター・瀬奈じゅんさんや宙組の凪七瑠海さんが演じました。

現トップさんもこれまでに芝居で女役を演じています。
真飛 聖さん『雨に唄えば』のリナ・ラモント、霧矢大夢さん『ガイズ&ドールズ』のアデレイド、水 夏希さん『あさきゆめみし』の明石の上、大空祐飛さん『長い春の果てに』のフローレンス…などなど。

また、専科や上級生の男役さんが年配の女性の役…お母さんやおばあちゃん役を……もよくあるパターン。


芝居の役ではなく、ショーの一場面で、男役が女役を演じることは多々あります。
男役を大勢はべらせた“女を演じる男役”のシーンなんて素敵。

元娘役のワタクシとしましては「娘役さんの役を取らないで~」なんて思い、本物の娘役さんに大いに活躍していただきたいところですが、男役が演じる女役には、娘役とはまたひと味違う魅力があるのは悔しいかな納得。


では逆、娘役が男役を演じるのは、少年役ぐらいです。
『エリザベート』ルドルフの少年時代、『THE SCARLET PIMPERNEL』のルイ・シャルル…etc。
少年ではなく大人の男性の役は、ショーの中でのコメディータッチのものぐらいかな。