宝塚歌劇をご覧になったことがない方でも「すみれの花咲く頃」という歌はどこかでお聞きになったことがあるのではないでしょうか…?

「すみれの花咲く頃」は、まさに宝塚歌劇団のテーマソング。
でも実はこの「すみれの花咲く頃」、宝塚歌劇団のオリジナルソングではありません。

すみれの花咲く頃「すみれの花咲く頃」の元歌は、ウィーンの作曲家・フランツ・デーレが作曲し、ドイツ映画の主題歌にもなった「白いニワトコが咲く頃」。
それがフランスに渡り「リラの花咲く頃」というシャンソンとして流行りました。

ちょうどその頃、パリにレビューの勉強のため留学していたのが宝塚歌劇団演出家・白井鐵造。
白井鐵造は帰国後の1930年、不朽の名作と言われるレビュー『パリゼット』を発表します。
『パリゼット』には、訳詩された7曲のパリ流行歌が登場しますが、その中の一つに、白井鐵造が持ち帰った「すみれの花咲く頃」が登場しました。

オーストリア、ドイツ、フランスで愛されたこの曲は、ニワトコ~リラ~すみれとタイトルも変え、宝塚歌劇の「すみれの花咲く頃」として誕生したわけです。

この「すみれの花咲く頃」の大ヒットにより“宝塚歌劇団やタカラジェンヌを象徴する花=すみれの花”となりました。
“すみれ売り”“すみれコード”、“すみれ寮”……
「すみれの花咲く頃」がなかったら、そのような言葉も生まれなかったでしょう。

また、宝塚市の市花もすみれ。
たった一つの歌が、大きな影響を与えました。


「宝塚の舞台では「すみれの花咲く頃」は必ず歌う」と思われる方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
イベントの際に歌ったり、時にはアレンジして壮大なダンスナンバーにしたり。
常に使われる楽曲ではありませんが、まるで、そっと傍で咲いているすみれのように常に身近にある……。
だからファンの方々にも覚えてもらい愛されてきたのでしょう。


宝塚で初めて歌われてから今年でちょうど80年。
バースから始まる流れるようなメロディーと、春の訪れと恋を語った美しい歌詞は、80年たった今でも色褪せることなく、多くの観客の心を和ませています。