役替りとは、一つの役を、何名かで交替に演じること。ミュージカル界では“ダブル・キャスト”“トリプル・キャスト”と呼ばれています。

今年の宝塚、この役替りがとても多い!

雪組『ロミオとジュリエット』まず、現在東京で上演中の雪組『ロミオとジュリエット』では、ヒロインの“ジュリエット”を、舞羽美海さんと夢華あみさんが。

星組の『ノバ・ボサ・ノバ』では、“オーロ”“マール”“メール夫人”の3役を、夢乃聖夏さんと紅ゆずるさんと真風涼帆さんの3名で。“マダムガード”を、毬乃ゆいさんと花愛瑞穂さんと音花ゆりさんの3名で。

花組の『ファントム』では、“シャンドン伯爵”“アラン・ショレ”“セルジョ”の3役を、愛音羽麗さんと華形ひかるさん朝夏まなとさんの3名で。

その中でも『ノバ・ボサ・ノバ』と『ファントム』の男役スターさんの「3名で3役」の役替りに注目してみましょう。

どれもが大きな3役。
しかし、お稽古期間が3倍になるわけではありません。
一ヶ月余りの間に、3役を覚え、こなすということは、かなりの集中力とエネルギーが必要。
星組『ノバ・ボサ・ノバ』なんて二本立ての内の一本なので、もう一本のお芝居の稽古もありますしね。

初日の幕が開いても、次の役の稽古。
演技のみだけではなく、役が変われば化粧も変わるし、早替りの段取りも変わるし…
「慣れてきた…」と思った頃に、また新しいことを馴染ませなければなりません。

役替りによる苦労は本人だけではなく、絡む共演者たちにとっても関係してきます。
相手が違えば、芝居も“間”も違ってきます。
それは衣装部さんやオーケストラなど現場のスタッフも同じで、つまりは関わる人すべてが大変。

でも、その苦労が、観客を楽しませる「役替り公演」を作ります。
観客にとっての役替りの醍醐味は、いく通りもの配役で楽しめること。
「このバージョンでも観てみたい」と、何度も劇場に足を運びたくなるものです。

そして何より役替りする生徒さんにとっては、ひと公演で3役も演じられる……。
こんなに貴重な体験はないでしょう。