「宝塚って凄いよねぇ~」とおっしゃる方の様々な理由に「和洋両方できちゃうんでしょ?」というのが上位に占めています。
洋物と日本物。
確かにこの二つをこなせる集団は、OSKさんなどを含め、数少ないと思います。

ところが年々「日本物が少なくなったなぁ…」と感じます。

今年2010年の本公演の作品数は17作品。その内日本物は星組の『宝塚花の踊り絵巻』(ショー)1本のみ。

これは今年に限ったことではなく、最近では『春麗の淡き光に~朱天童子異聞~』『花の宝塚風土記』『野風の笛』と3作あった2003年を除けば、毎年似たようなものです。

本公演以外の全国ツアーや博多座、中日劇場などでは、過去の作品を再演しています。
今年なら『紫子』、昨年は『大江山花伝』、2007年は『源氏物語 あさきゆめみしII』や『星影の人』。

またバウホールや日本青年館、シアタードラマシティなどでは、新作が上演される年もあります。

*『虞美人』のような他国のもの、『銀ちゃんの恋』のような現代物は外して考えました。

ただ……本公演以外は、組子全員が出演するわけではありません。
生徒によっては、「何年も日本物をやっていない…」「日本物をやらずして退団…」なんていう場合もあるでしょう。


ファンの方々にとって日本物はどうですか? 賛否両論分かれるでしょうね。
「質のいい日本物を観たい」「チョン・パで幕の開くショーが大好き!」という方もいれば「日本物って辛気臭いんだよね~」「スーツや黒燕尾の方がカッコイイ」という方もいるでしょう。

そうしたファンの方々の思い、好みはそれぞれなのは当然で、それはちょっと置いておいて。
元生徒としての思いなんぞを。


宝塚では多くのことを、上級生から教えられます。
そばで見て学び、教えてもらい、実際に経験し、自分のものとし、やがてそれを下の者に伝えてゆく…。これを続けているわけです。

だから、燕尾服でのかっこいい踊り方も、ワッカのドレスでの歩き方も、演出家や振付家は教えられません。
生徒から生徒。

日本物でいうと、化粧や衣装。刀や扇など小道具の扱い方。歩く、立つ、座る、殺陣など所作のすべて。
長袴での歩き方も、お引き摺りでの踊り方も、生徒から生徒。

またこれが、すべてにおいて「宝塚流」。

そうやって受け継いでいるシステム上、日本物の上演が少なくなると、経験者が減る=“教えられる生徒が少なくなる”という状況になるのでは…?と、そこが心配なのです。

(今でこそ……日本物の化粧に「ありゃ~」と驚くときがあります。お目々ぱっちりさせた狸ちゃんのようなお顔に)


とは言っても、どんな作品を上演するかは、やはりその組のトップスターに合わせるもの。
日本物より洋物のほうが似合うというトップさんだっているわけですから、“教えられる生徒が少なくなる”などという内部事情で、日本物を増やすわけにはいきません。

また昔に比べ生徒さんたち、どんどん身長が高くなり、腰の位置も高くなり、着物の似合わない体型になってきましたしね。



「日本物は必ず加えるように」……
小林一三先生のお言葉は、時代の流れゆえ、必ずしも遂行できるものではありません。

でもやはり思います。
洋物と日本物の両方がある……それは宝塚歌劇の大きな武器であり魅力だと。